「食育」って・・・なぁに? 食育基本法から学ぶシリーズ【第3回】
一般社団法人日本スポーツ栄養コンディショニング協会のスポーツ栄養コンディショニングアドバイザーマスター認定講師の杉本です。
一般社団法人日本スポーツ栄養コンディショニング協会 http://jsnca.com
前回(第2回)は、1990年代に入って食に関心のある人々や関係者が食育という言葉を使用することが増え、次第に大きな流れになっていくことをお伝えしました。しかし、それにはそうなるための「必然」があるはずですね。
第3回はそれをみていくことにしましょう。
1990年代以降に食育の必要性が説かれるようになったのには、現代の食に関する様々な課題が潜んでいたのです。
様々な課題とは・・・
①脂肪摂取の過剰など、栄養バランスの悪化傾向
②朝食欠食の習慣化、孤食(一人で食べること)や個食(家族が各々異なった料理を食べること)
内閣府「食育に関する意識調査」(平成27年10月)
男性 20~29歳 ほとんど食べない 24.6%
週に2~3回しか食べない 10.5%
30~39歳 ほとんど食べない 23.1%
週に2~3回しか食べない 8.7%
60~69歳 ほとんど食べない 5.1%
週に2~3回しか食べない 2.3%
女性 20~29歳 ほとんど食べない 13.0%
週に2~3回しか食べない 10.4%
30~39歳 ほとんど食べない 10.8%
週に2~3回しか食べない 5.0%
60~69歳 ほとんど食べない 1.5%
週に2~3回しか食べない 0.5%
独立行政法人日本スポーツ振興センター「児童生徒の食生活実態調査」(平成22年度)
[ほとんど食べない+週に4~5日食べない]比率
小学生 男子 3.2% 中学生 男子 5.0%
小学生 女子 1.8% 中学生 女子 2.6%
③児童生徒の肥満の増加、過度の痩身、体力の低下傾向など、健康への悪影響
④食の安全に対する信頼の喪失
BSE(牛海綿状脳症)問題・・・一般的には狂牛病問題、牛の脳の中に空洞
ができ、スポンジ状になる病気。日本では、2001年9月に千葉県でBSEの
疑いのある牛が発見されたとの農省発表 ⇒ 食用牛の全頭検査が導入
雪印食品産地偽装事件・・・国産牛肉買い取り事業を悪用し国外産牛肉を
国内産と偽って国の買い取り費用を不正請求
⑤体に良い食品、悪い食品に関する情報が氾濫する一方、適切な情報が不足していること
⑥食の外部化、ライフスタイルの多様化などにより、保護者が子どもの食生活を把握し、管理していくことが困難になっていること
今では日常生活において当たり前・・・というより欠かせない存在となったコンビニエンスストア
日本フランチャイズチェーン協会の統計資料より(店舗数)
1985年 7,419店 1990年 17,408店
1995年 29,144店 2000年 38,274店
2005年 42,643店 2008年 44,391店
⑦家庭において、食材に関する知識、調理技術、食文化、食に関するマナーなどを継承することが難しくなりつつあること
⑧食料資源の浪費
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況、産業廃棄物の排出及び処理状況」から推計(平成24年度)
食品産業全体の食品廃棄物等の発生量 1,916万トン(可食部 331万トン、不可食部 1,585万トン)
家庭系食品廃棄物の推計発生量 885万トン(可食部 312万トン)
つまり、可食部643万トンが廃棄されている!
があげられます。
第3次食育基本推進基本計画参考資料集 http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/pla/refer.html/
これって20年以上経った今でも、状況は変わっていないように思えます。それどころかますます悪化している印象すらあるのではないでしょうか。
次回(第4回)は2月10日にUPの予定です。
「食育」って・・・なぁに? 食育基本法から学ぶシリーズ【第2回】
スポーツ栄養コンディショニングアドバイザーマスターの杉本です。
※日本スポーツ栄養コンディション協会
http://jsnca.com
第1回では食育基本法の前文をみてみましたね。”未来を担う子どもたち”が主役でした。
第2回では「食育」という言葉の起源を、現代にいたる時間の流れの中で学んでみましょう。(少し退屈ですが歴史を学ぶことは大事ですからね。)
「食育」という言葉はいつ頃から使われていたのでしょう?
起源としては明治期の書籍をあげる事が多いようです。
■食養生の指南書「食物養生法」(石塚左玄 明治31年)
著者が説く食養生法により子どもの心身をはぐくむこと
■ベストセラー小説「食道楽」(村井弦斎 明治36年)
食物について知識を深め、良い食物を与えることによって子どもの心身をはぐくむこと
ただ、一般に定着するには至らなかったようです。
近年では1980年代に小児科医の真弓定夫氏や大分大学教授の飯野節男氏が図書・論文で使用されたものの、「食育」の語を冠した取り組みが広がることはなかったようです。
1990年代に入ると、食に関心のある人々や関係者がこの言葉を使用することが増え、次第に大きな流れになっていきます。
「食育」は健康・食生活ジャーナリストの砂田登志子氏が「欧米の生活習慣病を予防する見地から子どもを対象に行われている健康的な食習慣を身につけさせるための教育」を日本に紹介し、これを食育と呼んで普及に努めてこられたのが発端とされています。
また1993年には厚生省保健医療向健康増進栄養課(当時)の監修で「食育時代の食を考える」が出版されています。
1990年代から現代までの「食育」の主眼は、食について子ども自身を教育することが主眼に置かれていました。
このシリーズ、第2回~第5回は農林水産省農林環境課の森田倫子氏が書かれた以下の論文を参考にしています。
食育の背景と経緯 -「食育基本法案」に関してー 調査と情報457号
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/pabilication/issue/0457.pdf
文章ばかりで退屈な内容ですが、第3回をお楽しみに~
「食育」って・・・なぁに? 食育基本法から学ぶシリーズ【第1回】
一般社団法人日本スポーツ栄養コンディション協会主催のスポーツ栄養コンディショニングアドバイザーマスターの杉本秀明です。
今日2月1日から10回連載で食育基本法から「食育」を学んでみようと思います。
きっかけは・・・昨年2016年12月11日に東京で開催されたマスターミーティングに来られていた協会アドバイザーの森下尚浩氏(ファスティングマスター学院理事)のお話しでした。
その時は、へぇ~ そんな法律があるんだ?程度に聞いていました。でも調べてみて驚きました。
その驚きを皆さんとシェアしたくてこのシリーズを思いつきました。
文字が多くて、退屈かもしれませんが最後までお付き合い頂けたら、「知っ得」情報がゲットできますよ!
「食育基本法」は全33条からなる法律です(A4で10ページなので一度読んでみて下さい)。
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/pdf/kihonho_27911.pdf
前文があります。そこに、3つの大事なポイントが書かれています。
『子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。』
続けてこう書かれています。
『今、改めて、食育を、生きる上での基本であり、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選抜する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。』
そして、こう続きます。
『もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものではあるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。』
食育を知育、徳育、体育の基礎だと位置付けています。
「食」に関する知識と「食」を選択する力の習得を重視しています。
そして何よりここでは「子どもたち」が主役です。そう! ”未来を担う子どもたち”が主役なんです。
第2回は2月4日にUPします。
「出会い」・・・から
日本スポーツ栄養コンディション協会(JSNCA)の吉田良子理事長との出会いは・・・2013年12月8日 新宿のとある貸し会議室。
当時は協会設立前 日本スポーツ科学研究所代表としての肩書で、頑張る子どもたちの未来の為に楽しく、美味しく、感謝の食育を啓蒙されていた。
今まで知らなかった食のこと、栄養のこと、睡眠のこと・・・新鮮だったなぁ、60歳になったばかりの自分にとって。
若さいっぱいの0期生仲間と頑張った日々。月一回、大阪で仲間と共有する時間が愉しかった。
昨年、スポーツ栄養コンディショニングアドバイザーマスター認定講師資格を取得できた。
スポーツ栄養コンディショニングアドバイザーマスター認定講師としての杉本秀明
「理念」
□地域に根差した少年少女サッカー活動が自分のホームタウンです。
□そこで頑張っている子どもたちからいっぱいの元気と勇気をもらっています。
□それを支える家族・指導者の方々からたくさんの思いやりを頂いています。
健康栄養とスポーツ栄養の実践を通じて「恩返し」をするために全国の校庭に、グランドに満開の笑顔の花を咲かせます。
そのために5つのことに取り組みます。
①スポーツ栄養コンディショニングアドバイザーとして自らの経験を糧にしてサッカーを頑張っている子どもたちの才能を咲かせます。
②食(栄養)とコンディショニングによって才能を咲かせた子どもたち本人の笑顔とサポートする家族・指導者の笑顔を咲かせます。
③東京日野を発信源として広く少年少女サッカーの飛躍に貢献することによって日本中のピッチに元気を咲かせます。
④子どもたちにとって大事な「食+スポーツ」を家族・指導者に伝えることによってそこに関わる大人にも健康を咲かせます。
⑤一人でも多くの人にスポーツ栄養コンディショニングアドバイザーの素晴らしさを伝えることによってスポーツ栄養コンディショニングアドバイザーを目指す人の夢を叶えるお手伝いをします。
「Profile」
杉本秀明(すぎもとひであき)
1953年11月6日生まれ
奈良県橿原市出身、東京都日野在住
1990年、長男が小3のときに一緒に参加したサマーキャンプをきっかけに以来25年間、地元小学校の地域ボランティア活動に参加。
Jリーグ発足の1993年、地元日野市立旭が丘小学校をホームグランドとする少年サッカーチーム(旭サッカークラブ)創設に関わって以来、少年サッカー指導に携わる。現在、チーム代表。
2000年、三男の小学校卒業を機に日野市サッカー連盟少年部役員としての連盟活動に参加して以来、現在に至る。事務局長を経て2011年から連盟副理事長兼少年部部長として、年間約800試合を企画・運営する約50名の役員の先頭に立っている。
週末は自らも現役でシニア・還暦チームでサッカーを楽しんでいる。
サッカーを頑張る子どもたち、その保護者・指導者の方々に「健康栄養からのスポーツ栄養」の大切さを伝えたい。そしてグランドに、家庭にたくさんの笑顔を咲かせます。
2002年から日野市立旭が丘小学校学校運営連絡協議会会長。
資格:日本サッカー協会公認指導者D級コーチ、東京都サッカー協会サッカー審判(S3級)及びフットサル審判(F4級)資格
趣味:サッカー、ゴルフ、料理、酒を肴の仲間との歓談
1975年の食事 最も「健康的」
日経新聞に掲載のコラム「がん社会を診る」
2016年10月28日にこんな記事が。
東北大学大学院農学研究科の研究チームが、国民栄養調査などをもとに、1960年、1975年、1990年、2005年の和食の平均的メニューを実際に調理し、粉末化してマウスに8ヶ月間食べさせた・・・その結果。
一番長寿だったのは1975年のメニューを食べたマウスだったんですね。
60年は炭水化物の割合が多すぎて、栄養バランスが劣ります。
90年には食の欧米化の影響で脂質が増え、マウスの体重増加量は75年より多くなりました。
05年は肉類が多くて魚介類や炭水化物が少ないうえ、丼ものなど単品メニューが目立ち、バラエティーに欠ける傾向だありました。
75年のメニューでは、食品流通網の整備のおかげで魚介類や大豆、海藻などのほか野菜や果実も一年中手に入り、卵や豆類なども食べられていました。その頃のメニューを食べていたマウスは内臓死亡が少なく、コレステロールの値も低くなっていました。
さらに、学習能力も高く、がんの発生率も他の年代よりも少なくなっていたそうです。
「まごわやさしい」
「ま」は豆
「ご」はゴマ
「わ」はワカメ
「や」は野菜
「さ」は魚
「し」はしいたけ
「い」はイモ
さあ、見直してみましょう!食生活
体はきっと変えられます!
2016年夏・・・振り返り
今年の夏
8月21日 in シンガポール
長男家族が住んでいます。そして長男も孫(2年生、4年生)もFC JEPUN HITAMでお世話になっています。
シンガポールに働く日本人父さんたちが子供たちを指導されています。
そんなチームからスポーツ栄養セミナー開催のお誘いを受けました。
練習後、長男家族が住むコンドミニアムにある集会室にお父さんやお母さんが集まって下さいました。
8月25日 町田市サレジオ高専キャンパス
23日に帰国してすぐにBOCA JAPANが主催する夏期短期スクールに参加する選手たちのお父さん、お母さん
を対象にスポーツ栄養セミナーを実施しました。
□誰のために
□何のために
□「食べる」ことの大切さ
□体は変えられる
□バランスのよい食事
□Goodな食べ方
□栄養素
「まごわやさしい」
味噌汁で簡単に実践!
知っ得
一生懸命頑張る子どもたち。最高の応援団のお父さん、お母さん。
頑張る選手たちの体作りのために、パフォーマンスアップのために。
一日一日に積み重ね・・・小学生活6年で大きな差になる。
およそ90分の講義を集中して聞いて頂けた。